【巻頭エッセイ】

「男は何処にいる? 日本人は何処にいる?」

                   日本文化チャンネル桜代表 水島 総

台湾の取材旅行から無事帰って来た。
かなり身辺を警戒しながらの旅となったが、収穫は大きかった。
NHK取材陣は、テレビ製作者として絶対にやってはいけない「やらせ」行為をして
いたことが台湾で発覚したからである。
それも一度ではなく、何度も行っていた。
これはテレビ放送局では、局長級の首が飛ぶ事態なのである。
私達チャンネル桜では、この事実をはっきりNHKに突きつけ、厳正な処分を求めて
いくつもりである。

さて、私達の身辺保護についてだが、宿泊場所のホテルに私の部屋を聞いた
「怪しい?」男がいたようだったが、それ以外は異常な出来事は起きず、無事我が
祖国に帰還出来た。
以前、「直言極言」でも述べたが、台湾は李登輝時代や陳水扁時代とは全く様相
を変えている。
龍山寺公園でインタビューした老人は、はっきりと「政治的なことは言えない」とコメ
ントを拒否した。
この方はNHKの「JAPANデビュー」の番組内で軍歌を歌った御老人だった。
コメントを拒否した以外、彼は私達に好意的で優しい方だったが、この人に限らず、
親日的な御老人たちがインタビューを求められた時浮かべる複雑で困惑した表情
は、かなり共通したものだった。
曖昧な笑顔の奥に垣間見える恐怖の表情に、私は強烈な印象を受けた。
皆さんが善良で良い人たちだけに、その笑顔が痛ましく、申し訳ない思いがした。

日本がもっとしっかりしておれば、友邦台湾がこのような事態になることはなかった
と、私には分かるからである。
戦後日本が独立の気概を失い、臆病を隠すために平和平和、話し合いだ、外交だ
と口先で言い募っているだけで、全く頼りにならぬ現実を見れば、台湾人が心底
嫌だと思っても、大陸中国とうまく付き合うしかないのである。

「助けて、私が好きなのはあなたよ」と、台湾の人々が日本に呼び掛けても、日本
は暴力的に台湾を自分のものにしようとする中国を恐れ、台湾の窮状を見て見ぬ
ふりをしているのだ。
まことに情けない限りである。

小浜逸郎の本に「男はどこにいる?」という題名の本があったが、タイトル通りの
思いがする。
馬鹿は勉強すれば利口になれるが、臆病者はいつまでたっても様々な理由をつけ
て逃げ回るのだ。
これほど始末に悪いものはない。

静かに、水が沁み込んでいくように進行している台湾の現実は、容赦ない「非親日
化」の道であり、中台併合への道である。
これは既にかなり深刻な状態に来ているなと痛感した。

そんな状況でも、親日的な老人たちは私達に精一杯の「親日」を口にしてくれた。
彼等の勇気と独立の気概に、頭の下がる思いと「男はどこにいる?日本人はどこ
にいる?」と、恥ずかしさでいっぱいの気持ちになるのである。
 
恥ずかしさの極みがNHKである。
NHKは国民党台湾政府や中国共産党の「意」を受け、その「意志」を先取りする形
で、国共合作の企みの手先となって、この番組を制作したのである。
まことに情けないことだが厳正な事実である。

チャンネル桜の番組で、私はNHK「JAPANデビュー」シリーズ第一回「アジアの“一
等国”」のオープニングタイトルが、悪辣な印象操作の編集が為され、サブリミナル
効果等のテレビでは「禁じ手」の手法が使われていたことを暴露した。
この印象操作編集の狙いが、明治天皇、昭和天皇に代表される皇室(天皇)存在
こそ、戦争の悲惨を引き起こす原因であると、無意識のうちに国民に「刷り込む」
ことだと指摘もした。
そして、五月三日放送の第二回「天皇と憲法」の放送を見たとき、この指摘が間違
っていなかったことが証明された。

出演した御厨東大教授や山室京大教授は、番組の最後のコメントで、天皇存在は、
それが存在している限り、政治的存在であり、政治的に利用されて戦争への道を
歩むことになる、したがって、二十一世紀の日本には、天皇存在の意味や意義が
あるか、日本国民は勇気を持って考え直すべきであると明言していた。

つまり、彼等は、現日本国憲法の「護憲」を超えて、第一条から始まる天皇条項の
根本的な見直しを主張し、天皇(皇室)と天皇制度の廃絶まで言及する内容だった
のである。

「JAPANデビュー」シリーズは、出演者の冬服姿を見ると、昨年の秋から今冬に
製作されたものと推測されるが、注目すべきは、この頃、次は民主党政権の到来
が百パーセント間違いなしと、マスメディアが囃し立て、事実、あらゆるアンケート
調査でもそれが示されていたことである。
そんな中で、この四月からのシリーズ「JAPANデビュー」の放送は、民主党政権下
で放送されるものだと想定されていたのだろう。
民主党政権下でのNHK報道が、どのような方向を目指していくかを知る良い「材
料」となった。同時に、民主党や社民、共産党が日本の憲法の改定をどのように
考えているかも予想することが出来たのである。

この事態は、以前起きた「皇室典範改悪」騒動にも劣らぬ、深刻な謀略プロパガン
ダ工作であり、日本の「国体」「国柄」の根本に関わる策動が暴露されたと言って
いい。
 
今こそ、日本草莽と国民が、自らの力でこの謀略工作を叩き潰さなければならない。
 
私達は、台湾人と連帯し、五月十六日に渋谷でNHK大抗議デモを行う。
私達は、産経新聞に一ページ全面を使った意見広告も準備している。
私達は、NHKのヤラセ取材を暴露し、糾弾して、NHK関係者の厳正な処分を実現する。
 
日本人として、静かで、断固とした勇気と決意が、今、求められている。


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