【巻頭エッセイ】

「功名いづれ夢のあと 消えざるものはただ誠」

                 日本文化チャンネル桜代表 水島 総

表題にした詩句は、土井晩翠の詩集「天地有情」の「星落秋風五丈原」
からの引用だが、昔から民族派の人々に歌い継がれて来た「昭和維新
の歌(青年日本の歌)」(三上卓作詞)にもこの詩集の詩句が多数使わ
れている。

三上卓は、五・一五事件の叛乱軍将校の一人で、腐敗堕落した政治家
や財閥への悲憤溢れる歌となっている。
チャンネル桜に御出演いただいている西部邁先生の愛唱歌でもある。
知っている方も多いと思うが、引用する。


  「昭和維新の歌」

  一、泪羅(べきら)の淵に波騒ぎ 巫山(ふざん)の雲は乱れ飛ぶ
     混濁の世に我立てば 義憤に燃えて血潮湧く
  二、権門上(かみ)に傲れども 国を憂うる誠なし
     財閥富を誇れども 社稷を思う心なし
  三、ああ人栄え国亡ぶ 盲(めしい)たる民世に躍る
     治乱興亡夢に似て 世は一局の碁なりけり
  四、昭和維新の春の空 正義に結ぶ丈夫が
     胸裡百万兵足りて 散るや万朶(ばんだ)の桜花
  五、古びし死骸(むくろ)乗り越えて 雲漂揺(ひょうよう)の身は一つ
     国を憂いて立つからは 丈夫のうたなからめや
  六、天の怒りか地の声か そもただならぬ響きあり
     民永劫の眠りより 醒めよ日本の朝ぼらけ
  七、見よ九天の雲は垂れ 四海の水は雄叫びて
     革新の機到りぬと 吹くや日本の夕嵐
  八、あゝうらぶれし天地(あめつち)の 迷いの道を人はゆく
     栄華を誇る塵の世に 誰が高楼の眺めぞや
  九、功名何ぞ夢の跡 消えざるものはただ誠
     人生意気に感じては 成否を誰かあげつらう
  十、やめよ離騒(りそう)の一悲曲 悲歌慷慨の日は去りぬ
     われらが剣今こそは 廓清(かくせい)の血に躍るかな


そんな時代が来てしまった。

昨今の日本を想うとき、上記の歌のような感慨を抱く人も少なくないだろう。

以前、このエッセイに、二・二六事件の日、首都は雪が降り、決起した
兵士たちが不安と決意の中でその雪を眺め、
天皇陛下も又、同じ雪を御覧になっていたと書いた。
今、私たち日本人は、そのように、日本の無惨な崩壊と溶解の姿を見て
いるような気がする。

つい最近、日本の無惨な現状を目の当たりにし、思わず「義憤に燃え」て
しまったことがあった。
八日、陸上自衛隊とメディア関係者の親睦パーティー「睦会」があり、私も
出席した。

メディア代表として挨拶したのは、NHKの討論番組の司会や解説をして
いるSという男だった。
彼は陸上自衛隊の制服自衛官達の前で、自信たっぷりな表情で自身の
主張を開陳した。
曰く「自衛隊には災害救助とPKOの役割を中心的に果たしていただきたい、
国民の八割はそれを望んでいる。武力を行使することなど無いように望ん
でいる」である。

何のことは無い、以前の社会党の主張と同じく、自衛隊は国土保安の
「災害救助隊」であれと挨拶したのだ。
答礼として挨拶に立った1等陸佐も、苦笑しながら、「最も平和を願い、
戦争を望んでいないのは、我々制服自衛官ですから」と述べたが、
内心の思いはいかばかりだったか。

自衛隊は、一旦、危急のときあらば、身命を賭して国家と国民の為に戦う
ことを主要任務としている。
まず、日頃の自衛隊の国防安全保障についての働きに対して、
感謝の言葉を述べるのが筋だろう。
それを誇りある軍人たちの前で、お前らは武力をもった危険集団だから、
災害救助や国連平和活動だけしておけと、傲岸不遜な講釈を垂れたので
ある。

何という無礼な物言いであるか。
まことに現在のNHKをはじめとするマスメディアの惨状を表すかのような
出来事だった。
よほど、無礼者!一体誰が日本を守っているのだと怒鳴りたかったが、
自衛隊の広報宣伝活動とメディアとの親睦、交流の場であることを考え、
思い留まった。
自衛官の中にも私と同じ思いを抱いた人も少なからずいたのではないか。

こういう腐ったメディアの連中とは話したくも無いと思い、会場の料理を
ひたすら食ってしまった。
ちょっと目つきの悪い男がばくばくと人を寄せ付けない雰囲気で食って
いる様子だったろう。
まさにストレス太りの原因である。

このNHKの男が偉そうな挨拶をした同じ日、NHKはまたまた不祥事を
引き起こした。
相撲界の野球賭博事件で、警視庁が疑惑の相撲部屋を家宅捜索する
情報を捜索前に相撲部屋に通報したのである。

ジャーナリズムの倫理も誇りも忘れた姿は、メディアの劣化と日本という
主語を忘れ相手におべっかを使い情報を得ようとする「商売」人に
なり下がった姿でもある。
この姿勢は、中国報道の姿勢も同様である。

十月二日に行われた「頑張れ日本!全国行動委員会」主催の「中国の
尖閣諸島侵略糾弾!全国国民統一行動」のデモや街宣活動において、
東京だけでも約二千七百人もの人々がデモ行進し、全国四十八か所で
一斉に行われたにもかかわらず、日本のマスメディアが一行も、一秒も
報道しなかったのは、この表われである。
海外メディアのBBCやCNN、AP、AFP、ロイター、中国メディア等々は、
写真や映像入りで大々的に報道していたのが対象的だった。

いかに日本の情報を伝えるメディアが歪み、偏向しているか、
日本に報道の自由が失われているかの明白な証拠である。

今月号の『WiLL』連載「テレビ捜査班」で、テレビメディアが中国資本の
買い占めに遭い、ほとんどのテレビ局の影の筆頭株主が中国資本で
あることを暴露した。

中国の日本乗っ取りは、メディアの株だけでは無い。
土地買収や日本の三大メガバンクの株買収、主要日本企業の株も
買い占められ始めている。
何よりもこれまで日本国民が九十パーセント以上保有していた日本国債
まで中国は大量購入を始めている。

これをメディアは、中国の威光と脅しに屈して報道しない。
まことに「権門上に傲れども 国を憂うる誠なし 財閥富を誇れども
社稷を思う心なし」というメディアの姿である。
ただただ商売としての報道なのだ。

日本草莽の「天の怒りか地の声か そもただならぬ響きあり 民永劫の
眠りより 醒めよ日本の朝ぼらけ」を必要とする時節が訪れたのである。

悲しく残念なことである。

しかし、私たちは日本人であり、それを真正面から引き受け、
歩を進めなければならないのである。


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